どうも、とんマヨです。大阪で民泊を運営しながら、このブログを書いています。
今月から、このリポートを毎週水曜にお届けすることにしました。月イチやと、数字が動いてから記事にするまでのラグが大きすぎたからです。
ほんで、週次にして最初の号でいきなり面白い数字が出てきました。
訪日客は3カ月連続で減っています。それやのに、使われた金は過去最高でした。
客が減ってんのに売上が増えるて、どういうことやねん。算数バグってへん?
バグってません。頭数が減って、1人が落とす金が増えただけです。
なんや、ええ話やん。ほな安心やな。
安心なんは金を落とす側を捕まえてる宿だけです。うち、どっちやと思います?
🌏 訪日客は3カ月連続で減った。それやのに消費は過去最高
まず全体の数字から。日本政府観光局(JNTO)の6月推計値によると、6月の訪日外国人は314万8,600人(前年同月比 -6.8%)でした。
4月・5月に続いて3カ月連続の前年割れです。上半期の累計も2,108万4,800人で、前年同期から2.0%減っています。
ここだけ見ると「インバウンド終わったな」という話になります。ところが観光庁のインバウンド消費動向調査(4-6月期1次速報)を見ると、まるで違う景色が出てきます。
| 指標 | 実績 | 前年比 |
|---|---|---|
| 訪日外国人(6月) | 314万8,600人 | -6.8% |
| 旅行消費額(4-6月期) | 2兆5,096億円 | +0.2% |
| 1人当たり旅行支出 | 24万4,000円 | +3.3% |
4-6月期の消費額2兆5,096億円は、第2四半期として過去最高です。1人当たりの支出も24.4万円まで伸びました。1-3月期は22.1万円やったので、四半期で2万円以上ジャンプしています。
人数は減った。単価は上がった。掛け算した結果、総額はぎりぎり前年を上回った。これが今の日本のインバウンドです。
もうひとつ押さえておきたいのが、「減った」といっても水準は歴史的に高いままということです。
上半期の2,108万人はマイナス2.0%ですが、比較相手の2025年は過去最高を記録した年です。その98%まで来ているわけで、コロナ前と比べれば圧倒的に多い。崩壊ではなく、過去最高からの微調整と読むほうが実態に近いと思います。
ここを取り違えると、必要のない値下げに走ります。
🔄 中国が半分に消えて、財布の王者が入れ替わった
ではなぜ人数が減ったのか。犯人ははっきりしています。
中国です。6月の中国からの訪日客は34万700人で、前年から57.3%減りました。半分以下です。
一方で、その穴を他の国が必死に埋めています。
香港が28.5%増、台湾が14.6%増、韓国も7.8%増。韓国・台湾・米国・インドなど15の市場が、6月として過去最多を更新しました。
そして今回いちばん構造的な変化がこれです。
消費額のトップが、中国から米国に入れ替わりました。
| 順位 | 国・地域 | 消費額(4-6月期) |
|---|---|---|
| 1位 | 米国 | 3,848億円(15.3%) |
| 2位 | 台湾 | 3,639億円(14.5%) |
| 3位 | 中国 | 2,592億円(10.3%) |
| 4位 | 韓国 | 2,589億円(10.3%) |
| 5位 | 香港 | 1,452億円(5.8%) |
長いあいだ「爆買い」の代名詞やった中国が3位に落ちて、米国が首位に立ちました。人数では中国(34万人)と米国(35万人)がほぼ並んでいるのに、落とす金は米国が1.5倍近いわけです。
前号(中国が消えて、韓国が倍になった)では「頭数を誰が埋めるか」の話をしました。今月はその一段先で、頭数を埋めた国と、金を落とす国が別やということが数字で出てきています。
ほな韓国と台湾のお客さんは、金落とさへんてこと?
失礼な言い方やめてください。近いから滞在が短いだけです。台湾は消費額2位ですし。
……すんませんでした。
✈️ 関空は7カ月連続マイナス。それでも上期は過去2番目
大阪の玄関口はどうか。関西エアポートが公表した6月の運用実績です。
国際線の旅客は約187万人で16%減。うち外国人旅客は約144万人で21%減、これで7カ月連続の前年割れです。
数字だけ見ると重たいのですが、方面別に分解すると全国と同じ構図が見えます。香港・マカオ方面が21%増、韓国が14%増、台湾が7%増。落ちているのは中国路線だけで、6月は63%減、上期でも59%減という水準です。
ほんで、ここが大事なところ。上期累計の外国人旅客は942万人でした。
比較相手の2025年上期が約1,096万人で、これは過去最高の記録です。942万人は、その次に高い数字ということになります。
つまり関空は「史上最高やった去年から落ちた」だけで、水準そのものは歴史的な高さにあります。前年比のマイナスだけを見て「客が来ていない」と判断すると、実態を読み違えます。
🏨 大阪のADRが33%下落? それ、万博と比べてるだけです
宿泊単価の話をします。ここが今月いちばん誤解を生みやすい数字です。
ホテル市場を分析するHotelBankの調査(大阪府内のビジネスホテル約450施設が対象)によると、6月の推定成約ADR(平均客室単価)は7,884円で、前年同月比マイナス32.8%。3分の1近く落ちたことになります。
「大阪の宿泊需要が崩壊した」と読みたくなります。でも同じデータを2024年6月と比べると、下落幅はマイナス5.5%に縮みます。
33%と5.5%て、全然ちゃうやんけ。どっちがホンマやねん。
どっちもホンマです。去年の6月は万博の真っ最中やったんですよ。比べる相手がお祭りやったら、そら落ちます。
2025年の大阪は万博でADRが跳ね上がっていました。そこを基準にすれば、今年はどう頑張ってもマイナスに見えます。
これはこちらの深読みやなく、調査元のHotelBank自身が「2025年に一時的に上振れした水準と比較しているため、下落率が大きく見える構造」と分析しています。そのうえで、今の大阪は万博前のトレンドに回帰しつつある局面という見立てです。
この「前年比イコール万博比」の罠については、夏の民泊、値下げする前にで詳しく書きました。
数字を見るときは、前年比だけやなく、2年前・3年前と並べる。今の大阪ではこれをやらんと判断を誤ります。
🏠 民泊は「新規が止まった市場」になった
民泊まわりで、この夏いちばん大きい制度変更のおさらいです。
大阪市の特区民泊は、2026年5月29日で新規申請と居室追加の受付が終了しました。すでに認可を受けている施設は運営を続けられますが、これから増やすことはできません。
背景は近隣からの苦情です。大阪市の資料では2024年に556件、2025年は7月時点で314件が寄せられていました。
この変化は、既存のホストにとって両刃です。
- 追い風——供給が増えない市場になった。既存の認可が持つ価値は相対的に上がる
- 向かい風——苦情が制度を動かした事実は変わらない。1軒のトラブルが業界全体の首を絞める段階に入っている
「増やせない」ということは、裏を返せば今ある1軒をどう磨くかしか道がないということです。
磨くというのは、内装に金をかけるという意味やありません。数字で言えば、稼働率・単価・レビュー評価の3つです。
とくにレビューは、供給が増えない市場では効き方が変わります。新しい宿がどんどん出てくる市場なら、評価の低い宿は埋もれて消えていくだけです。でも供給が固定された市場では、同じ顔ぶれのなかで比較され続けることになります。
去年の1件の低評価が、来年も再来年も同じ棚に並んだままになる。そういう市場に変わったということです。
💰 ほんで、うちの宿はどっち側におるんか
ここまで市場の話をしてきました。最後に、自分の宿の数字を晒します。
先日、7月分の宿泊税を計算しました。大阪府の宿泊税は1人1泊の単価が5,000円未満なら非課税です(税率の詳細は宿泊税ラッシュの記事に書きました)。
結果はこうでした。
7月は6組・延べ84人泊。納める宿泊税は0円。
全組が非課税ラインの下やったからです。いちばん単価が高かった組でも、1人1泊3,992円。課税ラインまで1,000円ちょっと余っていました。
税金ゼロや! やったーー!
喜ぶとこちゃいます。市場は1人24万円使う客の話をしてるのに、うちは1人1泊4,000円で回してるってことです。
誤解のないように書いておくと、これは悪いことやありません。うちはグループでの一棟貸しなので、総額では十分な予約になっています。頭割りすると単価が下がるのは構造上あたりまえです。
それに、うちは今そういうフェーズです。開業からまだ日が浅く、最優先は安定して埋めること。ここで「市場が質に動いてるから値上げや」と短絡したら、空室が増えて元も子もありません。
大事なのは、値上げするかどうかやなく、自分がどっち側の商売をしてるかを正確に知っておくことやと思っています。
市場は「量から質」に動いています。うちは今、はっきり「量」側にいます。それを分かったうえで量をやるのと、分からずに量をやるのとでは、次の一手の精度が全然ちがいます。
旅行支出
(4-6月期)
いちばん高かった組
課税ライン5,000円の下
宿泊税
全組が非課税
🌤 秋の追い風と、28年ぶりの逆風
最後に、これから3カ月の外部環境です。ここでこの夏いちばん大きい出来事が起きました。
燃油サーチャージから。7月・8月発券分は欧米路線で片道65,000円と、過去最高の水準でした。ただし日本経済新聞の報道によれば9月以降は下落する見通しです。9月・10月分の正式な改定は8月中旬に発表されます。こちらは素直な追い風です。
問題は為替のほうです。
7月30日に日本が単独で、翌31日には日本と米国が協調して、円買いの為替介入に踏み切りました。8月3日の共同声明で公表されています。
これがどれくらい異例かというと、協調介入そのものが15年ぶり、円買いの協調介入にいたっては28年ぶりです。前回は1998年、アジア通貨危機のときでした。
結果、164円に迫っていたドル円は157円台まで戻し、8月3日には一時155円台をつけています。約3カ月ぶりの円高水準です。
円高て、ええことちゃうんか? 輸入も安なるやろ。
暮らしにはええことです。ただうちの商売は「日本が安い」で成り立ってるほうですよね。
ここは正直に書きます。民泊にとって円高は逆風です。これまでインバウンドの追い風の何割かは、単純に円が安かったことで説明できました。その前提が、政策の意思をもって止められたわけです。
ただし、慌てる必要はないとも思っています。理由は2つあります。
ひとつめ。155円でも歴史的には十分な円安です。数年前の水準に戻ったわけではありません。海外から見た割安感が消えたわけではないです。
ふたつめ。ここまで見てきた通り、市場はすでに「安いから来る客」から「使う客」へシフトしています。1人当たり24.4万円を使う層は、為替が数円動いたから旅行をやめるという層ではありません。
つまり円高は、この記事でずっと見てきた「量から質」への転換を、さらに加速させる圧力として効いてくる可能性が高い。安さで選ばれていた宿ほど、影響を受けることになります。
📌 まとめ
- 6月の訪日客は314万8,600人で3カ月連続の前年割れ。それでも4-6月期の消費額2兆5,096億円は第2四半期として過去最高
- 1人当たり支出は24.4万円(+3.3%)。人数は減り、単価は上がった——「量から質」が数字で確認できた
- 中国は-57.3%で半分以下。穴を埋めたのは香港・台湾・韓国で、15市場が6月として過去最多
- 消費額のトップが中国から米国に交代。頭数を埋める国と、金を落とす国は別
- 関空は7カ月連続マイナスやが、上期の外国人旅客942万人は過去2番目の水準
- 大阪のADR「-32.8%」は万博との比較。2024年比なら-5.5%。前年比だけで判断しない
- 特区民泊は5月29日で新規受付終了。供給が増えない市場で、今ある1軒を磨くしかない
- 燃油は9月以降に下落する見通し。長距離の欧米客にとっては追い風
- ただし7月30日・31日に28年ぶりの円買い協調介入。164円台から155円台まで円高が進んだ。「安いから日本」の追い風は政策で止められた
客数が減った市場で、消費が過去最高になった。これは「客を増やす競争」が終わって、「誰に来てもらうかを選ぶ競争」が始まったということです。そこへ28年ぶりの円買い介入が重なりました。安さで選ばれてきた宿ほど、この秋は考え直す時間になります。まず自分の宿が量と質のどっち側にいるのかを、数字で把握するところからやと思います。
よっしゃ分かった。ほな明日から1人24万円のお客さんだけ取るわ。
それ、旅行中の総額です。宿代ちゃいます。
ワイの皮算用が……。
来週も水曜に数字を見ましょう。週1回やと、変化に気づくのが早なりますから。
「なくさない財布」スリムで安全な本革ウォレット SmartWallet2 saffiano(大容量+スキミング防止)




