どうも、とんマヨです。大阪で一棟貸しの民泊を運営しながら、毎月10日に観光経済の数字を定点観測しています。月イチ連載の第3回です(前号Vol.2はこちら)。
今月の要点は3つ。訪日客が2ヶ月連続の前年割れ、燃油サーチャージが史上最高値からピークアウトへ、そして住宅地民泊の「ゼロ日規制」通知が今月出る。数字の裏で起きとる客の入れ替わりを、現場の実感込みで解説します。

ちめん太、大変や。訪日客、2ヶ月連続で減っとるらしい。インバウンドバブル、終わったんかもしれん…

とんマヨさん、先月まで「過去最高や!」て騒いでませんでした?数字ちゃんと見てから騒ぎましょ。

……見たら、減っとるのに19の国では過去最高やった。どういうことやねん。
🌏 訪日マクロ:2ヶ月連続マイナスの正体は「中国の穴」
日本政府観光局(JNTO)が発表した5月の訪日外客数は355万9,900人、前年同月比マイナス3.6%。4月に続いて2ヶ月連続の前年割れです。
「ほら、インバウンドバブル崩壊や」と言いたくなるところですが——ちょっと待ってほしい。同じ月に、韓国・台湾・米国・マレーシアなど19市場が「5月として過去最高」を記録して、中東とインドに至っては単月の過去最高を更新しています。
つまり全体のマイナスは「みんな来なくなった」んやなくて、巨大な中国市場の落ち込みを、他の19市場の絶好調でも埋めきれてないという一点に集約されます。崩壊やなくて、客の構成が入れ替わる「構造転換」の最中。ここを読み間違えると、宿の戦略を全部間違えます。
月次で線にすると、今年のインバウンドの「凸凹」がよう分かります。2月は346.7万人で2月として過去最高、3月も361.9万人で3月の過去最高。1〜3月の累計は1,068万人で前年比プラス1.4%と、2年連続で第1四半期1,000万人超え。ところが4月を境に2ヶ月連続の前年割れ——「過去最高」と「前年割れ」が2ヶ月おきに同居する、平均では何も読めん相場になっています。要因は一貫して中国の弱さで、他市場が好調な月は最高値を更新し、届かん月は前年を割る。この「中国次第の綱引き」が、今年の総量の正体です。
🛫 関空:中国6割減を、韓国2割増が埋めた5月
この構造転換、関空の数字で見るともっと露骨です。関西国際空港の5月実績は総旅客約254万人、国際線は約204万人で前年比12%減。ただし中身が激変しとる。
| 方面 | 前年同月比 | 読み方 |
|---|---|---|
| 中国方面 | 40%(6割減) | 穴が空いた |
| 韓国方面 | 120% | シェア36%で最大勢力に |
| 台湾方面 | 109% | 安定成長 |
| 香港・マカオ方面 | 108% | 堅調 |
| 日本人(国際線) | 108% | 海外旅行が復活中 |
関空の国際線シェアで韓国方面が36%。大阪の宿にとって「一番の上客はどこの国か」が、この1年でガラッと変わった——と書きかけて、念のためうちの宿帳を数え直しました。

じゃあ、とんマヨさんの宿も韓国のお客さんだらけなんですか?

それがな、AIに宿帳を集計させたら、今年はアメリカ・カナダ・豪州・欧州がズラーッと並んで……韓国、2組だけやった。

大阪最大の波、完全にスルーされてるやないですか。
そうなんです。「大阪の平均」と「自分の宿の客層」は、平気でズレる。うちみたいな一棟貸しに大人数で泊まるのは欧米・豪州のファミリーやグループが中心で、いま急増しとる韓国市場は短期・ホテル志向が強い。つまり韓国シフトの恩恵は、宿のフォーマットによっては自動では降ってこないんです。市場データはあくまで海全体の潮目。自分の宿がどの潮に乗っとるかは、自分の宿帳が一番正確に教えてくれます。うちの場合、次のセクションの燃油サーチャージ(=欧米客の財布)のほうが、韓国シェア36%よりよっぽど死活問題です。
🏨 ホテル:万博の反動で、1万円台が激戦区に
ホテル側は今、去年の万博特需の「返済期間」に入っています。業界誌の稼働率調査では、大阪のADR(平均客室単価)は万博の恩恵の反動で前年比大きくマイナス。市場の主戦場は1泊1万円台のアッパーミドル帯に集中していて、名門ホテルまでこの価格帯に参戦してきた。
一方で人手不足が稼働率の上限になる「取り切れる宿だけが残る」現象も進行中。需要はあるのに、人がおらんくて部屋を売れないホテルが出てきています。
民泊ホスト目線で言うと、これは二重の意味で他人事やない。①1万円台にホテルが降りてくると、民泊の価格帯と正面衝突する。②でも清掃・運営を仕組み化できてる民泊は「取り切れる」側に回れる。価格では押されるが、供給余力では勝てる夏です。
🏠 民泊:「ゼロ日規制」通知が今月出る(続報)
6月の記事(ゼロ日規制の解説)で書いた件の続報です。観光庁が、住宅宿泊事業(新法民泊)について自治体が条例で住宅地の通年営業を禁止することを容認する通知を、今月中に全国へ出す方針です。つまり「営業日数ゼロ」までの上乗せ規制が、国のお墨付きで可能になる。

「ゼロ日規制」て、あれやろ。毎月0のつく日は営業したらあかんやつ。10日・20日・30日は休業や。

全然違います。新法民泊は本来「年180日まで営業できる」制度なんですけど、自治体が条例で「この住宅地は0日」て決められるようになる、いう話です。営業できる日がゼロ。

それ規制やなくて、退場勧告やないか……。
ただし大阪の宿の大半を占める特区民泊はこの通知の対象外。大阪市はすでに新規受付を終了済み(5月末)で、いまは迷惑民泊根絶チームが市内約7,000施設の営業実態調査を進めています。
整理すると、大阪の民泊は「新規は締め切り、既存は品質検査」のフェーズ。既に認定を持って真面目に運営しとる側にとっては、供給が増えない分むしろ追い風——というのが前号からの見立てで、今月もそれは変わっていません。変わったのは、全国の住宅地で新法民泊の逃げ場が狭くなること。これから始める人は、立地と制度の選び方が一段とシビアになります。
✈️ 燃油サーチャージ:史上最高値、ただし9月から下がる
7〜8月発券分の燃油サーチャージは史上最高値。欧米路線は片道65,000円、往復で燃油だけ13万円という水準です。中東情勢による燃料高と、1ドル160円前後の円安のダブルパンチ。
ただし先物はピークアウトの気配で、9月以降の発券分は下落見込み(欧米片道53,000円程度への低下予想)。つまり「秋以降に発券する欧米客のコストは、今より1〜2万円軽くなる」。長距離市場(欧米・中東)は今が底で、秋冬の予約に追い風が吹く可能性がある——早期予約の値付けを考える上で、ここは覚えておきたい数字です。
🎰 中長期:夢洲は更地になり、杭打ち機が回っている
万博閉幕から9ヶ月。会場のパビリオンは解体が進んで夢洲はほぼ更地に。寂しい話に聞こえますが、その隣ではIR(統合型リゾート)の杭打ち機がフル稼働しています。投資額1兆5,130億円、想定来訪者は年間2,000万人。開業は2030年前後が目標とされています。
民泊ホストの時間軸で言うと、IRはまだ「3〜4年先の話」。ただ、万博で証明された「大阪はメガイベントで人を呼べる」という実績と、跡地開発への継続投資は、大阪の宿泊需要の底を長期で支える材料です。目先の安売り合戦と、中長期の強気材料。この時間差を頭に入れて撤退・投資の判断をするのが、今の大阪でやる意味やと思っています。
🏠 うちの現場:夏の谷と、値上がりに焦るゲスト
マクロの話ばっかりしてても仕方ないので、うちの現場の数字も晒します。7月の稼働は7割超で堅調。問題は8月前半にぽっかり空いた谷です。お盆を含む夏休み期間、実は大阪の一棟貸しには鬼門で、家族客の需要はあるのに、ホテルの安売りと選択肢の多さに埋もれやすい。
そんな中、面白いことがありました。10泊の問い合わせが、数日おきに4回届いたんです。同じゲストから。承認しても完了せず期限切れ→また問い合わせ→その間に自動価格調整で数千円上がる→「金額を増やさないでください」とメッセージが来る——という攻防。動的価格設定(プライシングツール)が普及した結果、ゲスト側も「早く確定せな上がる」を学習しとるんですね。宿側から見ると、これは締め切り効果として機能する一方、価格に敏感な層を取り逃がすリスクとの綱引きです。
ちなみに先月号で予告したとおり、当宿は先日Airbnbのスーパーホスト認定を取りました。認定月の収支が赤字やった話は別記事で正直に書いてます。認定と黒字は別問題——安売り合戦の夏こそ、この区別が効いてきます。

📌 まとめ:安売り合戦の夏をどう構えるか
- 訪日は2ヶ月連続マイナス。ただし正体は中国の穴で、19市場は過去最高=崩壊やなく構造転換
- 関空は韓国がシェア36%で最大勢力。ただし「大阪の平均」と「自分の宿帳」は平気でズレる——照合してから戦略を決める
- ホテルは万博反動で1万円台に集結。民泊は価格で殴り合わず、一棟貸しの独自価値で守る
- ゼロ日規制の通知が今月出る。特区民泊は対象外=大阪の既存組には追い風継続
- 燃油は史上最高値から9月に下落へ。秋冬の欧米客に早めに種をまく
うちが仕込む「韓国の波」対策メモ
「宿帳と照合せえ」で終わったら評論家なので、照合した上でうちが実際に仕込む手も晒しておきます。欧米本命は変えずに、谷(平日・閑散期・直前)を埋める補完部隊として韓国市場を取りに行く作戦です。
- ドームの公演日程×価格:京セラドームで韓国アーティストの公演がある日は遠征ファンの宿需要が跳ねるので、日程に合わせて価格と最低泊数を調整
- 韓国の連休カレンダー:日本の祝日やなく、旧正月・秋夕など韓国側の連休で需要を読む(関空まではLCCで週末弾丸圏内)
- 韓国語レビューの種まき:泊まってくれた韓国ゲストに母国語レビューを依頼。韓国語レビューが数件つくと予約の入り方が変わる
- 小物3点:変換プラグ(韓国はCタイプ220V)・高出力ドライヤー・全身鏡。安いわりにレビュー言及率が高い
- 韓国語のハウスガイドと、においを残さん清掃・脱臭の徹底。清潔感への感度は全市場でトップクラス
数字が下がる月こそ、内訳を見る。全体のマイナスの裏で、あなたの宿の「次の上客」はもう増え始めている。

で、とんマヨさんの宿の「次の上客」は誰なんですか?やっぱり韓国の方?

決まっとるやろ、韓国や!明日から玄関にキムチ置いて、表札もハングルにするで!

この記事、読みました?「宿帳的には秋の欧米ファミリーが本命、韓国はレビュー2件から地道に」って。

はっ!そうやった!地道に韓国アイドルの研究するわ!

それはあなたが好きなだけじゃないですか……。
杭打ちハンマー 単管パイプ用 内径68mm SHN600
出典
- 訪日外客数(2026年5月推計値)|JNTO
- 5月の訪日外客数356万人、中東が単月で過去最高|訪日ラボ
- 関西国際空港 2026年5月実績|sky-budget
- 関空の5月外国人旅客数、中国は前年比6割減に|訪日ラボ
- ホテル客室稼働率調査 26年4月速報|月刊ホテレス
- 観光庁、条例による民泊の実質営業禁止を通知へ|HTプランニング
- 2026年2月の訪日客数346万人|やまとごころ.jp
- 訪日外国人客数推移データ(3月過去最高)|アイ・エヌ情報センター
- 燃油サーチャージに値下がりの兆し|タビリス
- ANA・JALサーチャージ、9月以降は下落へ|日本経済新聞
※本記事は執筆時点の公開情報と筆者の運営実績にもとづく個人の見解です。数字は各一次ソースをご確認ください。




