どうも、とんマヨです。大阪で民泊を運営しながら、このブログを書いています。
はじめに。7月末の熊本の地震で被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。
報道で伝えられている現地の状況は、想像するだけで胸が詰まるものでした。炎天下での断水と停電。冷房のない夜の車中泊。10リットルのガソリンを買うために数時間並ぶ行列。食料が足りず、ようやく身を寄せた避難所では、仕切りのない空間でプライバシーを保つことも難しい——。発生から2週間あまり経ったいまも、あたりまえの暮らしはまだ戻っていません。一日も早い復旧を願うばかりです。
そんなニュースを追うなかで、わたしの手が止まった話題があります。被災した人が、避難所の体育館ではなく「普通の民泊」に無料で泊まり始めているというのです。
民泊ホストとして、これは他人事ではありませんでした。調べてみると、なかなかよくできた仕組みなのです。同じように宿をやっている人、そして「自分に何かできることはないか」と感じた人に届けばと思い、今日はこの話を書きます。
ちめん太、熊本のニュース見たか。体育館やのうて、民泊が避難先になっとるんやて。
見ました。この暑さで雑魚寝の避難生活は、体がもちませんからね。個室で休めるのは大きいと思います。
せやねん。ほんで調べたら、これがよう出来た仕組みでな。うちらにも関係ある話やったんや。
🏠 熊本で、避難のかたちが変わり始めていた
まず熊本で何が起きているのか、整理します。避難先は今、二段構えになっています。
ひとつは行政ルートです。熊本県は8月から、ホテルや旅館への「宿泊避難」の受付を始めました。避難所の生活環境を良くして、体調を崩す人を減らすのが狙いです。報道によると、始まった時点で90を超える施設が確保され、宿泊料は原則として公費でまかなわれます(食事代や宿泊税は自己負担)。対象は被害の大きかった市や町で、当初は高齢の方や障害のある方、妊婦さんなどを優先していましたが、その後すべての避難者に広げられました。
ホテルや旅館を避難に使う取り組み自体は、これまでの災害でも行われてきた「知られた手」です。新しいのはここからです。
もうひとつのルートとして、Airbnbがつくった非営利団体のAirbnb.orgが、地震の2日後から熊本で緊急避難先の無償提供を始めました。避難が必要な被災者や、救援にあたる医療関係者が対象です。つまり、被災した人が「普通の民泊」に無料で泊まるという試みが、いま推進され始めているのです。
そもそも「Airbnb.org」って何ですか。普通のAirbnbと違うんですか。
ワイも最初よう分からんくてな、AIに「分からんから整理して」言うたんや。Airbnb本体とは別の非営利団体で、寄付とかで動いとる災害支援の専門部隊らしいわ。
自分がやってる業界のことをAIに聞くの、どうかと思いますよ。
🤝 民泊と防災は、実は相性がいい
ニュースを追いながらあらためて思ったのですが、民泊という商売は、防災ととても相性がいいのです。理由は大きく3つあります。
理由①:「今日から人が寝泊まりできる状態」を毎日維持している
寝具がある。お風呂がある。清掃が回っている。行政が体育館に避難所を一から開設するのに比べたら、はるかに早く、はるかに人間らしい環境で人を受け入れられます。
理由②:災害のとき、周辺の宿は「空く」
避難先として提供されるのは、被災地のどまんなかというより、その周辺地域の宿が中心になるはずです。そして災害が起きると、海外からの旅行者は渡航を取りやめたり時期をずらしたりしますし、滞在中の人も帰国を早めます。つまり周辺の宿は、ちょうど宿泊需要が減って空室が増えるタイミングを迎えるのです。
普段なら「うっ」となる空室が、そのまま受け入れの余力になる。需要が消える瞬間と、部屋が必要になる瞬間が、ちょうど重なる——需要と供給の噛み合わせとして、実はよくできています。
理由③:ホテルにない武器——キッチンと洗濯機
ちめん太、クイズや。民泊にあってホテルにない、避難生活の武器はなーんや?
キッチンです。あと洗濯機も。自炊も洗濯もできます。
……全問正解や。0.2秒で答えんといてや、ワイのクイズコーナーやぞ。
多くの民泊には炊事場が付いています。避難生活が長引くほど、これが効きます。配られる食事や買い置きに頼りきりにならず、自分と家族のペースで、温かいものを作って食べられる。ホテルの部屋ではなかなかできないことです。
そして洗濯機です。避難生活では着替えが限られるので、洗濯ができるかどうかは想像以上に切実です。コインランドリーを探して並ばなくても、部屋で洗って干せる。さらにアイロンやドライヤーといった生活用品もひと通り揃っているのが民泊です。「泊まる場所」ではなく「暮らせる場所」——ここが、ホテルの客室との一番の違いだと思います。
行政とのつながりという意味でも、民泊は保健所の立入調査のような「チェックされる関係」だけではなく、「いざという時に頼りにされる関係」もあるわけです。実際、自治体とホストが災害時の協定を結ぶ動きは各地で進んでいます。
そしてもうひとつ。避難をきっかけに初めて民泊に泊まった人が「民泊って、ええやん」と知ってくれたら、それは業界全体の好感度と地位の向上につながります。被災した人の力になることが、めぐりめぐって民泊の未来にも返ってくる。だからわたしは、災害時の受け入れ登録には積極的でありたいと思っています。

💴 「民泊にタダで泊まれる」は誰が支えているのか
「民泊が無料の避難先になる」と聞くと、今回の地震で急ごしらえした仕組みに見えるかもしれません。実は違います。この仕組み、始まりは14年前のニューヨークです。
2012年、ハリケーン・サンディで大勢の人が家を失ったとき、ニューヨークのひとりのホストが「うちに無料で泊まってください」と自宅を開放したのがすべての始まりでした。この行動に他のホストが続き、Airbnbはこれを仕組みに育てて、2020年12月に独立した非営利団体「Airbnb.org」を設立します。Airbnb本体が運営費を負担するので、集まった寄付は100%が被災者などの宿泊支援に使われるという建て付けです。
実績の規模も紹介しておきます。
| Airbnb.orgのこれまで | 数字 |
|---|---|
| 部屋を提供したホスト | 6万人以上 |
| 泊まった被災者・支援者 | 25万人以上 |
| 無料で提供された宿泊数 | 150万泊 |
| ロサンゼルスの山火事(直近の大規模事例) | 避難者1.7万人以上が利用 |
出典:Airbnb.org公式/ロサンゼルス山火事の支援報告
日本では2025年6月に、全国47都道府県の指定地域を対象にした「災害対策プログラム」が始まりました。災害が起きて支援が決まってから24時間以内に緊急の宿泊先を提供する体制を、国単位で常設したのは世界でも日本が初めてだそうです。熊本は、それが国内で初めて本格的に動いたケースでした。現地ではピースボート災害支援センターなど日本の支援NPOと連携して動いています。
では、被災した人はどうやって泊まるのか。流れはこうです。
- 被災した人が、現地で活動する支援団体から紹介を受ける(誰でも自由に申し込めるわけではない)
- Airbnbの本人確認を済ませる
- 宿泊費にあてられる「クレジット」がアカウントに付与され、対象の民泊を無料で予約できる
泊まる側は1円も払いません。では、受け入れる宿側はどうやって参加して、お金はどう流れるのか——ここから先は、ホスト向けの実務の話です。
📝 【ホスト向け】自分の宿を「避難先」にする方法
受け入れ側に回る入口は、大きく2つあります。
入口①:Airbnb.org(民間ルート)
実は、すでにAirbnbに宿を掲載しているホストは、特別な登録なしでAirbnb.orgの予約を受け入れられます。追加の手続きはなく、災害時に支援対象のゲストからの予約リクエストが届く形です。受け入れるかどうか、無償や割引で提供するかどうかは、そのつどホスト側で選べます。
入口②:自治体との協定(行政ルート)
もうひとつが、自治体と「災害時に宿を避難先として提供します」という協定を結ぶルートです。「結局どこで何をすれば登録できるのか」が一番知りたいところだと思うので、わたしが実際にやった手順をそのまま書きます。
📋 わたしの場合(大阪市)の実録
- 入口はAirbnbのホストコミュニティのミートアップでした。各地で定期開催されている無料の集まりで、ホスト登録していると案内メールが届きます。その中に「民泊を災害時の二次避難所として活用する仕組み」がテーマの回があり、参加登録して話を聞きに行きました
- 会場で説明してくれたのは大阪市の危機管理室(防災部局)の担当の方。会の流れで「協定書のひな形が欲しい人は」と案内があり、手を挙げました
- 後日、担当の方から「災害時等における宿泊施設の提供等に関する協定」のひな形(PDF)がメールで届きます。主要な条項に解説が付いていて、非エンジニアのわたしでも読める親切なつくりでした。あわせて災害時協力井戸や防災アプリの案内も
- 内容を確認して、「締結を了承します」とメールに返信。施設名・所在地・許可区分・連絡先を添えました。あとは市からの事後手続きの案内を待つ流れです
- ここまで費用ゼロ・工事ゼロ・提出物は実質メールの往復だけ。ハードルになるものは何もありませんでした
——と、わたしはたまたまミートアップ経由でしたが、イベントを待つ必要はまったくありません。窓口に直接問い合わせるのが最短です。
📮 大阪市で民泊をやっている方の窓口
大阪市危機管理室 危機管理課 防災企画グループ
メール:cb0001@city.osaka.lg.jp(組織アドレス)
電話:06-6208-7378
「災害時等における宿泊施設の提供等に関する協定の締結を検討したい」と伝えれば、話が通ります。
大阪市以外の方は、お住まいの自治体の危機管理・防災部局に「災害時に宿泊施設を提供する協定はありますか」と問い合わせてみてください。部署名は自治体ごとに違いますが、「危機管理」「防災」と付く部署が窓口です。
大事なのは、「事前に」登録しておくことです。災害が起きてから手を挙げても、連絡網づくりや契約はすぐには進みません。平時に協定や登録を済ませておけば、もしもの際に速やかに宿の提供が始まり、その分だけ早く、被災した人が屋根の下で休めます。
ちなみにとんマヨさん、うちはその協定、もう結んだんですよね?
……つい最近な。
説明を聞きに行ったの、春でしたよね?!
返信したつもりで5ヶ月寝かせとってん。熊本のニュース見て、受信箱の底から発掘したわ。
みなさんは、案内が来た日に返信してくださいね。
ちなみに「相手の返事待ちだと思っていたら、ボールを持っていたのは自分だった」のは保険の手続きに続いて2回目です。シリーズ化を全力で阻止したい。
💰 【ホスト向け】お金はどう流れるのか
待てや。ええ話風に言うとるけどな、それ要は「ホストはタダで部屋出せ」っちゅうボランティアやろ! 掃除代も光熱費も誰が払うねん!
違います。公式ヘルプに書いてありますが、ホストにはほかの宿泊と同じように宿泊料が支払われます。費用を持つのはAirbnb.org側です。
……え、もらえるんかい。
正確には、無償や割引で提供する選択肢もホスト側にある、です。しかもAirbnbはこの宿泊からホスト手数料を取らずに寄付へ回すそうです。さっきの逆ギレ、謝ってください。
整理すると、Airbnb.orgルートのお金の流れはこうなります。宿泊費はホストが設定している料金がベースで、その支払いをAirbnb.orgが寄付をもとに負担する。ホストが望めば、無償や割引での提供も選べる。つまり「タダで泊まれる」の原資は、ホストのタダ働きではなく寄付です。
行政ルート(自治体との協定)の場合は、災害救助法にもとづいて宿泊費が公費から支払われる枠組みがあります。熊本のホテル・旅館の宿泊避難も、この公費負担で動いています。民泊が協定で受け入れる場合の単価や支払いのタイミングは、自治体や協定の内容ごとに定められているので、届いた案内・協定書で必ず確認してください。
ここ、わたしは大事なところだと思っています。善意だけの仕組みは続きません。お金がちゃんと回る設計だから続くのです。ホストは部屋を出す、費用は寄付や公費が支える、被災した人は無料で泊まる。誰かが一方的に削られる構図になっていないから、ここまで広がったのだと思います。

📌 まとめ——空室は、災害のときの資源になる
- 熊本では避難先が二段構えに。行政のホテル・旅館の宿泊避難は「知られた手」、民泊の活用はいま推進され始めた新しい試み
- 災害時は旅行キャンセルで周辺の宿こそ空室が増える。需要が消える瞬間と部屋が必要になる瞬間が重なるから、民泊は避難先に向いている。キッチンで自炊・洗濯機で洗濯までできる「暮らせる場所」なのはホテルにない利点
- Airbnb.orgは2012年のひとりのホストの行動から始まり、これまでに25万人以上が利用。ホストにはきちんと宿泊料が支払われる設計で、原資は寄付
- 避難で初めて民泊に触れた人の「ええやん」は、業界全体の地位向上にもつながる。受け入れ登録は災害が起きる前の「事前登録」が命——案内が来た日に返信(5ヶ月熟成させた者からのお願い)
防災への参加は、特別な設備投資からではなく「仕組みを知って、事前に登録しておくこと」から始まります。あなたの宿の空室は、災害のとき、誰かの緊急の寝床になれます。
ちなみにとんマヨさん、ご自宅の防災リュックはどうなってるんですか。
……来週や。来週買うねん。
その「来週」、5ヶ月コースですね。



