どうも、とんマヨです。大阪で民泊を運営しながら、このブログを書いています。
先週のこのリポートで、日米が円買いの為替介入に踏み切った話を書きました。164円に迫っていたドル円が155円台まで戻った、という話です。
あれから1週間。もう一回チャートを見にいったら、こうなっていました。
158円台。ほぼ戻ってます。
え、先週「28年ぶりの大事件や」て大騒ぎしたやん。ワイの記事どうなんの。
事件やったのは本当です。ただ事件のあとに何が起きたかまで見んと、値付けには使えません。
ほな結局、うちの宿は値上げすんの、せんの。
そこを今週は数字で出します。為替が何%動いたら、宿代が何%変わるんかです。
💴 6兆円で5円。ほんで1週間で戻された
まず先週の出来事を、金額の面から見直します。
日本経済新聞によると、7月30日の円買い介入は市場推計で6兆〜7兆円規模だったとみられています。ニューヨーク市場で1ドル162円80銭前後から、約50分で157円80銭まで一気に動きました。
翌31日には米財務省も動きます。しかも「複数の銀行に伝達」という異例の予告つきでした。普通、介入は黙ってやるものです。
ここまでが先週のリポートの範囲です。
ほんで今週。外為どっとコムの週間見通しによれば、8月7日時点のドル円は158円55銭前後。予想レンジは156円〜160円とされています。
| 時点 | ドル円 | 何があったか |
|---|---|---|
| 7月30日 直前 | 162円80銭前後 | 約40年ぶりの円安水準 |
| 7月30日 直後 | 157円80銭 | 約50分で5円。推計6〜7兆円 |
| 8月3日 | 一時155円台 | 日米の共同声明 |
| 8月7日 | 158円55銭前後 | 戻した |
介入で動いた5円のうち、1週間で3円ほどが戻っています。
ざわ…ざわ…
💰 ほんで、その6兆円で国はいくら儲けたんか
ここ、自分もずっと引っかかってました。6兆円て、国家予算の規模から見ても相当な額です。
ただ調べていくと、「6兆円使った」という言い方がそもそも誤解を生むことが分かりました。
円買い介入は、政府が持っているドル資産を売って、円を買う取引です。国がお金を消費したんやなくて、資産の形をドルから円に持ち替えただけ。減ってません。
え、ほな損してへんの? ドブに捨てたと思っとったわ。
損どころか、たぶん儲かってます。
日本の外貨準備は2026年7月末で1兆2,870億ドルあります。6〜7兆円は円換算で370〜430億ドルなので、全体の3%ちょっとを取り崩した計算です。
ほんで、そのドルをいつ買ったかが効いてきます。
外貨準備のドルは、過去に「円売り介入」をしたときに買ったものです。当時のレートは110〜120円台。それを158〜162円で売っているわけです。
元経済財政政策担当の高橋洋一氏は、売却額のおよそ25%が為替差益になると試算しています。10兆円の介入なら約2.5兆円、という言い方です。
| 介入額 | 為替差益(推計) |
|---|---|
| 6兆円 | 約1.5兆円 |
| 7兆円 | 約1.75兆円 |
50分の作業で1.5兆円です。時給に直したら考えたくない数字になります。
しかも、これは今回の介入に限った話やありません。外為特会(外国為替資金特別会計)はドル建ての資産を1.2兆ドル持っていて、そのドル金利は4%台です。黙っていても利息が入ってきます。
その利息収入は、実はもう国の財布に流れています。財務省の令和6年度決算を見ると、こうなっていました。
- 令和5年度決算 → 一般会計へ 2兆133億円
- 令和6年度決算 → 一般会計へ 3兆2,007億円
「財源がない」という話の横で、年に2〜3兆円は既に流れているということです。
ほな含み益も全部使うたらええやん。50兆円あるらしいで。
それ、使おうとした瞬間に円高になります。
ここが最大の壁です。含み益を円に換えるということは、ドルを売るということ。つまり円買い介入そのものです。
50兆円ぶんのドルを市場で売れば、猛烈な円高になります。「含み益を財源にします」と言った瞬間に「円高にします」と宣言しているのと同じ、という構造です。
さらに現行のルールでは、介入で得た円はまず政府短期証券の償還に回ります。自動的に一般会計の財源になるわけでもありません。日本経済新聞も「剰余金すでに活用、含み益では壁」という書き方をしています。
要するに「金はある。けど取り出すと副作用が出る」という状態です。
宿の商売から見ると、ここは1点だけ意味があります。介入は国にとって損な取引やないということです。損やないなら、これからも必要なときに何度でもやってくる。ただし恒久的に円高にはできない。「たまに来るけど、構造は変わらん」——この前提で値段を考えたらええ、ということになります。
🧭 介入は「止める」んやなくて「速度を落とす」もの
ここで「介入は失敗やったんか」と思いたくなります。
ただ、これは半分だけ正しいと思っています。
野村総合研究所のレポートでも、15年ぶりの日米協調介入という点は異例としつつ、効果の持続性には疑問という見方が示されています。
為替は毎日、何十兆円という単位で取引されています。6兆円は大金ですが、流れそのものを反対向きに変える額ではありません。
実際、財務省はそのあとSNSでドル確保策に言及しています。「まだ弾はあるぞ」と見せることで効果を持たせる狙いです。
つまり今起きているのは「円安の終わり」やなくて、「円安の速度制限」です。
なんや、ほな民泊は今まで通りでええやん。円安のままやろ。
その「今まで通り」が、実際どんだけの幅か分かってます? 数字にしましょう。
🧮 155円と158円で、宿代は何%変わるんか計算した
ここからは自分で電卓を叩いた話です。
やり方は単純で、円建ての値段を変えずに、ドル建てでいくらに見えるかを出すだけです。海外のゲストが見ているのは、円の数字やなくてこっちなので。
1泊10,000円の宿で計算してみます。
| ドル円 | 1泊1万円は | 旅行1人分 24.4万円は |
164円との差 |
|---|---|---|---|
| 164円 | 約61ドル | 約1,488ドル | — |
| 158.55円 | 約63ドル | 約1,539ドル | +3.4% |
| 155円 | 約65ドル | 約1,574ドル | +5.8% |
155円まで円高が進むと、こっちは値段を1円も動かしてないのに、ゲストから見たら5.8%の値上げになります。
これが介入が宿にもたらした変化の正体です。
ほんで、ここが大事なところ。5.8%は、思ったより小さいです。
宿の世界で5.8%というと、1泊1万円が10,580円になる程度の話です。この幅で旅行をやめる人は、そんなにいません。航空券の値動きのほうがよっぽど激しいです。
🤔 「円高になったら客が減る」は、たぶん半分間違い
「円安がインバウンドの燃料」というのは、業界でよく言われる話です。自分も先週そう書きました。
ただ、数字を並べると素直に頷けなくなります。
JNTOの6月推計値を、市場別に見てみます。全部、同じ為替の下で起きた数字です。
- 中国 -57.3%
- 韓国 +7.8%
- 台湾 +14.6%
- 香港 +28.5%
- 米国 +2.7%
為替が客数を決める最大の要因なら、全部が同じ方向に動くはずです。
実際はバラバラです。中国だけが半分に消えて、香港は3割近く増えている。中国の激減が政治と政策の話だというのは前に書いた通りで、為替では説明がつきません。
ここから言えることは、たぶんこうです。
為替が効くのは「客数」やなくて「1人がいくら使えるか」のほう。つまり円高は、来る人を減らすんやなくて、宿の値上げ余地を削りにくる。
値上げ余地て、なんかカッコええ言い方すんな。
要は「円安のおかげで上げられてた分」が減るということです。上げた値段が実力かどうか、バレる季節です。
📌 まとめ:8月28日に、答え合わせがある
今週の結論は、正直こうです。
- 7月30日の円買い介入は推計6〜7兆円。約50分で5円動いたが、1週間で3円ほど戻した
- その介入で国は推計1.5〜1.75兆円の為替差益。外為特会からは既に年2〜3兆円が一般会計へ流れている
- 起きているのは円安の終わりやなくて速度制限。歴史的には158円も十分な円安
- 164円から155円まで円高が進んでも、ゲストから見た値上げ幅は5.8%。旅行をやめる幅ではない
- 6月の市場別を見ると、同じ為替の下で中国-57.3%・香港+28.5%。為替は客数の主因やない
ほんで、うちの宿がこの1週間で何をしたかというと、為替を理由にした操作は何もしていません。
やったのは最低価格の引き上げだけです。理由は円高やなくて、手数料と清掃費を引いたあとの手残りを計算し直したら、前の下限では固定費が回らんことが分かったからです。
ここまで書いといてなんですが、「円安を前提に値付けしてる宿」なんて、たぶん一軒もありません。そんな意識で値段を決めてる人、見たことないです。
おい、ここまでの話なんやってん。
意識してへんだけで、結果的にそうなってるんですよ。もうちょい聞いてください。
ほとんどの人は、相場を見て値段を決めてます。ツールの推奨値、隣の宿の価格、去年の同じ日。
ほんでその相場そのものが、円安の下でインバウンドが積み上げてきた相場です。
つまり相場に合わせて値付けしてる時点で、意識してなくても円安の上に乗っかってます。そこに乗っかっている限り、円安が抜けたぶんは自動的に自分の取り分から抜けていきます。誰も値下げしてないのに、手残りだけ減るということです。
為替は自分では1円も動かせません。動かせるのは下限だけは相場やなくて、手残りから逆算して決めておくことだけです。えらそうに書きましたが、うちも先月までは下限を相場から決めてました。
これ、宿の話だけやないと思っています。
インデックスを積み立ててる人も、中身はドル建ての資産です。円高になれば円建ての評価額は下がる。為替が「関係ない」のやなくて、関係ありまくるけど見んでええ、というだけの話です。
積立なら、円高は損した時期やなくて同じ金額で多く買える時期ですから。
宿の値付けも積立も、やってることは同じやと思います。為替を読むんやなくて、自分で決められるほうの数字を先に決めておく。それだけです。
次の山場は8月28日(金)19時です。財務省が7月30日〜8月26日の介入総額を公表します。先週書いた「量から質への転換」が、ここでどう動くか。また水曜に見にいきます。
よっしゃ、ほな28日に6兆円の答え合わせやな。当たったら焼肉行こか。
誰も賭けてません。公表されるだけです。
ワイの焼肉が……。
手残りが増えたら行きましょ。そのための下限引き上げです。
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